第3章永遠回帰とは何か
人生のあらゆるものが永遠に戻ってくる
本章ではいよいよ「永遠回帰」を取り上げます。正確には「同じもの(同一物)の永遠回帰」といいます。
『ツァラトゥストラ』第三部、第四部のテーマであると同時に、この本の中心思想といっていいものです。
この思想がニーチェの書物にはじめて登場するのは、「神は死んだ」と同じく、一八八二年に刊行された
『悦ばしき知』のなかにおいてです。そのなかの「最大の重し」という文章を見てみましょう。
「もしある日またはある夜、デーモンがあなたの最もさびしい孤独のなかにまで忍び寄り、こういったら
どうだろうか。『おまえは、おまえが現に生き、これまで生きてきたこの人生をもう一度、さらに無限に
繰り返し生きねばならないだろう。そこには何一つ新しいものはなく、あらゆる苦痛と快楽、あらゆる思
念とため息、おまえの人生のありとあらゆるものが細大洩らさず、しかもそのままの順序でもどってくる。
――この蜘蛛も、木々の間から洩れる月光も、そしてこのいまの間も、このおれ自身も』。
(中略)
この思想があなたを支配するとしたら、それはこれまでのあなたを変貌させ、ひょっとしたら打ち砕く
かもしれない。何ごとにつけても、『おまえはこのことをもう一度、さらに無限に繰り返して、欲する
か』という問いが、最大の重しとなってあなたの行動のうえにのしかかるだろう!あるいは、この最終的
な永遠の確認と封印より以上に何物も欲しないためには、どれほどあなたは自分自身と人生とを愛さね
ばならないだろうか?」(『悦ばしき知』「最大の重し」SS341)