数日前からヨブ記を読んでいる。今回は教分館から出ている関根正雄訳で読んでいる。
関根正雄訳には、各章が終わるごとに、短い解説がところどころついている。
ヨブ記は「ウツの地にヨブという名の人がいた。」で始まる。
これについて関根正雄は、こう注釈をつけている。
(2)3節「東の子らのうち、最も大いなる者である。」:パレスチナの東の砂漠地方。いずれにせよヨブがイスラエル人でなかったことは重要、イスラエル人でなく、神を畏れたヨブはイスラエル人へのアイロニーをはじめから含む。
これを読んで私はびっくりした。私は何十年、教会に通い、牧師でもあり、聖書の教師でもあり、それなりに聖書の勉強もしてきたつもりであったが、ヨブでイスラエル人でないと書いてあるものを今まで読んだ記憶がなかった。また、これまで聞いてきた説教でも、ヨブがイスラエル人でない、とは聞いたことがなかった。
p.55「枠物語(=1,2章)は明らかにそのような義人がユダヤ民族の外に存在したのだと語るのである。とすれば、実際にユダヤ民族を視野に置きながら、この民族の意識に敢えて挑戦する意図がヨブ記作者には存在したと理解するほかはない。『地のどこにも彼のような者はいない』(一・8,二・3)と、神自身が保証する。異教徒の世界に、ユダヤ教世界の誰よりも神によって義人と認められる人物がいる。そのような主張は、ユダヤ民族には聞き捨てならないことである。実際、ヨブ記冒頭のこの記述は、この民族の宗教的な指導者であった古代のラビたちに躓きを与えた。ー中略ー ヨブ記作者は彼の時代の選民思想に真っ向から挑戦するために、この民族の知識人の一人として、普遍主義の立場からこの書物を書いた。『ウツの地』に住む一人の完全な義人がユダヤ民族の選民思想を相対化するために登場する。」