バルタン誠路nのブログ

聖書についての随想、書籍感想

ソロモンの知恵

今朝、通読表に従って歴代誌第二1章から4章までを読んだ。

1章には、ギブオンでの出来事が書かれている。

ダビデの後を継いで王になりたてのソロモンがギブオンに行った時に、主が夢に現れて「あなたの心にあるものを何でも願いなさい。それを叶えてあげよう。」と言われた。それに対して、ソロモンは、「知恵と知識」を願った。その願いを主はとても喜ばれ、「富も、財も、名誉も、あなたを憎み者のいのちさえも願わず、また長寿も願わず、むしろ、わたしがあなたをその王として立てたわたしの民を裁くための知恵と知識を願ったので、その知恵と知識があなたに授けられる。またわたしは、あなたの前のどの王にも後の王にもないほどの富と財宝と誉れをあなたに与える。」(Ⅱ歴代1:11,12)

 

 並行記事は列王記第一の3章である。歴代誌は、列王記と比べて南ユダ王国寄りである。イスラエルの王のことは書かないし、ダビデとバテシェバのことも書かない。しかし、このソロモンのギブオンでの出来事については、明らかに歴代誌より列王記の方が詳しく書かれている。少し、不思議な感じがした。

 

 それはさて置き、今朝、一つの発見をした。2章では、ソロモンが隣国ツロの王ヒラムに、神殿建設の協力を要請する内容が書かれている。レバノン杉、もみ、白檀などの木材を供給すること。そして、金属や織物、彫り物などの技術に精通しているそれぞれの分野の熟練工を派遣することも要請している。

 

 「そこで今、私のもとに、金、銀、青銅、鉄の細工、および紫織物、紅織物、青織物の製造に熟練した人で、各種の彫り物の技術を心得ている人を送ってください。父ダビデが備え、私のもとにいるユダとエルサレムの熟練した者たちも一緒に働きます。また、レバノンから杉、もみ、白檀の木材を私のもとに送ってください。あなたの家来たちがレバノンの木を切ることに熟練していることを知っております。もちろん、私の家来たちも、あなたの家来たちと一緒に働きます。」(Ⅱ歴代2:7,8)

 

 ここまでの内容は、別にこれまで知らなかったわけではない。ツロの王ヒラムは、ソロモンの父ダビデとも親交があり、その関係から協力を要請した。レバノン杉は有名で、それがソロモンの神殿の建設に使われたこともずっと昔から頭に入っていた。ツロから、熟練工がたくさん派遣してされて、彼らの助け無くしては、神殿建設も様々な神殿で用いられる神具も作れなかったことも知っていたつもりであった。

 しかし、今朝、はたと思った。フラムも送られてきた熟練工たちも、もしかしたら異教徒ではないのか。ソロモンは「主の御名のために宮を建て」るとヒラムに言っているし、ヒラムの返事で次のように言っている。

 

  ツロの王ヒラムは文書を送ってソロモンに答えた。「主はご自分の民を愛しておられるので、あなたを彼らの上に立てて王とされました。またヒラムは言った。「天と地を造られたイスラエルの神、主がほめたたえられますように。」(Ⅱ歴代2:11,12)

  しかし、だからといってヒラムがヤハウェの神に仕えていたわけではない。どんな先代からの親交があり、ヤハウェ信仰に理解があったとしても、外国人であり、異教徒であることは純然たる事実である。

 

 従って、ソロモンの神殿は、外国からの木材を材料に、イスラエルの熟練工とツロの熟練工が共同作業で作り上げたものなのだ。イスラエルの民が何よりもまして民族の象徴として誇った神殿、他のどの民族も拝んでいない、唯一の真の神であるヤハウェを礼拝する神殿は、実は、外国産の材料と外国人の知恵と労働をもって建てられていたのだ。

 

 ソロモンの知恵というと、大岡裁きに似た「この子を剣で二つに切り分けなさい。」の箇所やシェバの女王が家来を引き連れてきて、文字通り「聞きしに勝る」ソロモンの知恵に仰天したところが有名である。しかし、歴代誌第二の1章と2章を続けて読むと、実は、神がソロモンの願いを叶えて授けられた知恵とは、「私の家来たちも、あなたの家来たちと一緒に働きます。」に表される心の広さだったのかもしれないと思った。

 

 私はここ15年ほど、キリスト教学校に奉職している。そこは、多くのノンクリスチャンの先生の協力無くしては成り立たないところだ。正直、私はずっと、「キリスト教教育がノンクリスチャンの協力によってなされる」ということに否定的な感じを抱いてきた。主を信じていない人たちにキリスト教教育はできるはずがない。できるはずがないものをやっているのは、妥協でしかない。まがいものだ、っと。しかし、今朝、「受け入れなさい。私はそれを喜んで受け入れている。私の栄光は彼らの働きによっても現される。それには、クリスチャンであるかないかの区別はない。」と語られたと感じた。